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人工金時代に備える──銀が「次の主役」になる理由

米国のMarathon Fusionが「水銀から金を生成する技術」を発表し、貴金属市場に衝撃が走っています。

もし核融合炉の商業化とともにこの技術が普及すれば、金の希少性そのものが崩れ、

数千年続いた「金中心の価値観」が揺らぐ可能性があります。

では、その時代の主役は誰になるのか──。

注目すべきは銀(シルバー)です。

1. 技術革新は想定より早いかもしれない

従来は核融合の商業化を2035年以降と見込む声が主流でした。

しかし小型核融合炉や民間企業主導の開発が急速に進展しており、

10年以内に小規模実用炉が誕生する可能性も現実味を帯びています。

人工金の普及が前倒しになれば、金市場の構造変化も早まります。

2. 金は残るが、銀は消える

金は90%以上がリサイクル可能で、供給過剰になれば価格下落に直結します。

一方、銀は電子部品や太陽光パネルなどに使われ、

ほとんどが回収されず消耗されていくため、構造的な供給不足に陥りやすいのです。

3. 戦略備蓄の矛先が銀に

中国・インド・ロシアは金の備蓄を国家戦略の柱としていますが、

人工金時代には銀が新たな戦略資産に加わる可能性があります。

米国も半導体・再エネ・軍需分野で銀を不可欠とするため、

備蓄対象に加える動きが出れば需給はさらに逼迫します。

4. 供給制約と国有化リスク

世界最大の銀生産国メキシコでは資源ナショナリズムが強まり、

銀資源の国有化が進行中。

銀は銅や鉛亜鉛の副産物として採掘される場合が多く、

単独採掘での供給増は難しい構造があります。

5. 金融市場の「時限爆弾」

大手銀行によるペーパーシルバーの空売りポジションは巨額。

もし現物需要が急増すれば、ショートスクイーズで短期間に急騰するリスクがあります。

これはLMEニッケル市場で起きた一夜の大混乱に似た構図です。

6. 産業需要は爆発的に増える

太陽光パネル、EV蓄電池、5G通信機器、AIデータセンター、軍需用センサー──

銀は多くの分野で代替不可能な素材です。

特にAI普及によるデータセンター需要拡大は、

再エネ+蓄電設備増設を促し、銀需要を押し上げます。

7. 金銀比価──歴史的水準への回帰、あるいは逆転も

現在の金銀比価は約80ですが、歴史的には15〜16:1が長期平均でした。

人工金によって金の供給が増え、銀の需給が逼迫すれば、

20以下への低下、さらには逆転の可能性もあります。

金 2,000ドル × 比価20 → 銀 100ドル

金 1,500ドル × 比価16 → 銀 93.75ドル

こうした比価の変化は、投資家の資産配分を大きく動かす可能性があります。

結論:銀は「金離れ」の最大の受益者

人工金技術は、金市場の価値構造を根底から変えるかもしれません。

そのとき、安全資産と実需資産の両方の性格を持つ銀は、投資資金の新たな避難先となるでしょう。

産業需要の急増

地政学リスク

供給制約

金融市場の歪み

という複数の上昇要因が重なることで、

銀は数十年に一度の強気相場を迎える可能性があります。

人工金時代、資産戦略の主役は銀になるかもしれません。

田中 英数ゼミ

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